「人生も新聞も七転び八起」
時事通信社和歌山支局長・井本智康
昨年八月に和歌山支局長として着任して、ようやく八カ月が過ぎました。プレーイングマネジャーとして記事も書いていた前職の阪神支局長時代と比べると通勤時間が格段に短くなったこともあり、新聞と向き合う時間が増えました。
私がこの世界に足を踏み入れることになったのは大学の入学式。大学新聞社の勧誘にあったことがきっかけとなりました。当時はバブル期で、大学生の多くは体育会の部活ではなく、ナンパなスポーツ系サークルに入って、合コンにいそしむというキャンパスライフでした。生来へそ曲がりな私は勧誘されたその日に入社?を決め、翌日から大学新聞社に入り浸ることになりました。
また、おっちょこちょいで負けず嫌いの性格を見込まれたのか、最初に任された記事が「部活訪問」という部活体験のコーナーでした。大学では、特に運動部系で珍しい部活があり、最初に取材で訪れたのは自転車部のサイクルサッカー。要は自転車の車輪を使ってのサッカーなのですが、ボールを追いかけて右往左往した挙句、転倒してばかり。原稿を書き上げ、つけた見出しは「ボールを追いかけて七転び八起き」。ところが編集長はそれを一目見るなり「七転八倒」と訂正しました。「練習風景を見てへん癖に」と思いながらも妙に感心してしまったためか、卒業するまで大学新聞社にズルズルと入り浸ることとなりました。
へそ曲がりは就職活動でも変わらず、時事通信社へは営業職で入社をしました。その頃の各金融機関は自由化・国際化が急速に進展し、時事通信社の提供するマーケットデータを利用しており、記事を書くことよりも金融機関が必要とする情報が何かというニーズを探る方に興味がひかれたためです。
東京本社や大阪支社などの大きな拠点から立川や盛岡などの小さな支局へ配属されると、営業の場を探して右往左往し、人手不足で記事を書く機会が増え、成果を残すために七転八倒することになりました。
現在、私は京都からの単身赴任ですが、留守宅では地方新聞を購読しています。京都という年間行事が多い土地柄のため、地方新聞には地域の課題、情報が充実しており、親子の会話の中で格好の話題になっていました。
新聞各紙はこれまで以上にその新聞でなければ読めない記事や特集を掲載して欲しいと思います。日々、地方面を充実されるのにご苦労されているのは重々承知していますが。地域の情報は間違いなく親子の話題になってくれることでしょう。特に地方紙においては、その土地で生活していくうえで不可欠な生活情報を提供できる強みがあります。デジタルシフトもまだまだこれからで、伸び代も多く残っています。新聞各紙が読者のニーズに応え続ける限り、新聞は七転八倒ではなく、七転び八起きで最後には立ち上がることであろうと信じています。