「NIE実践」のすゝめ ~新聞を取り入れた教育活動~

和歌山大学教職大学院客員教授 貴志年秀

 はじめに
 新しい学習指導要領では、小中学校とも教科学習全体の理念を表す“総則”に「新聞」の記述が初めて盛り込まれた。今回の指導要領改訂の大きな柱である「主体的・対話的で深い学び」実現に向け、情報活用能力の活用を図るための教材として新聞が加えられたのである。さらに、個々の子どもたちの発達に即した指導の充実のために新聞を活用することとしている。
 本来、子どもの“学び”は能動的なものであり、授業と言う舞台で、互いの考えを交流しながら知的好奇心を高め、意欲的な活動へと発展させていかなければならない。その主体的で対話的な学びの構築に、さらにそこから得た学びを広く深くしていくために、情報の宝庫である“新聞”が大きな役割を果たすのである。

 古くて新しい学習“NIE”
 NIE(Newspaper in Education)とは、学校などで新聞を教材として活用することである。
 新聞を活用した教育活動は、1930年台にアメリカで始まり、日本では85年静岡で開かれた新聞大会で提唱されたといわれる。その後、96年には日本新聞協会がNIE基金を発足させ、NIE事業を積極的に推進し始めた。和歌山県においても98年に和歌山NIE推進協議会が設立され、新聞社と協働しながらNIEに関する研究推進、並びに会員相互の研鑽・親睦を図っているところである。
 さて、新聞活用の実践は何も今に始まったことではない。情報収集の方法としての新聞記事の活用、また情報発信の手段としての「○○新聞づくり」などは、昔から学校現場では使われた手法である。それでは昔と今では何が違うのか。現行の指導要領では、新聞活用を各校種・各学年・各教科の指導事項の中にきちんと位置付けている。教科書には、NIEの3分野「新聞を活用する」「新聞を作る」「新聞の機能を学ぶ」内容が盛り込まれた。私が住む和歌山市の小学校でも、各教科領域に渡って新聞を活用し、子どもたちの自主的な学びを誘い、社会の事象と子どもたちを結びつけるような取組を行っている先生が多くいる。

NIE実践の紹介 
 例えば小学校1年生の実践。「え~!1年生に新聞!?」とお思いかも知れないが、1年生だから新聞なのである。国語のひらがなの学習で担任が子どもたちに新聞を配る。しかも、漢字も読めない子に一般紙を配る。
「自分の名前をみつけよう」という課題で、記事の中からひらがなで自分の名前の文字を探しノートに張り付けていく。大きなひらがなの活字を探した子が得意げに自慢する。
 4年生の国語の時間の実践。「アップとルーズを見つけよう」という課題で、アップとルーズの写真を記事の中から選んでいく。選んだ記事にその写真がなぜアップなのかなぜルーズなのかを書き込んでいく。
 6年生の社会の時間の実践。「平和新聞をつくろう」という課題のもと、「世界」「日本」「憲法」「政治」など歴史や政治を学んだ子どもたちが平和というテーマの新聞づくりを行う…等々。
 NIE実践のキーワードは、①新聞のある環境づくり②学校ぐるみの取組③日常的な実践 である。「主体的・対話的で深い学び」をつくる手立てとして、今後もNIE実践を推進させていきたい。

【ことば集め1年】

【壁新聞づくり6年】

「『NIE実践』のすゝめ」貴志年秀・和歌山大学教職大学院客員教授【2018年9月】 

投稿ナビゲーション